実印を侮るなかれ

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ある日、部屋で寛いでいたら突然母が血相を変えて入ってきた。
ただならぬ雰囲気に何事が起こったのかと聞いてみたら「実印が見当たらない…」と。
それを聞いた時は、『印鑑一つでそこまで慌てなくてもいんじゃない?』なんて心の中で思ったけれど、実はものすごく大変な事だったんだと今になって初めて分かった。

まず、実印がどういう物かピンと来ない人も多いと思うので説明を。
実印は、住民登録している市町村の役所などに戸籍上の本名を彫った印鑑を登録申請し、受理されたものの事を言う。
本名と言っても姓名という決まりは無く、姓だけでも良いが、やはりフルネームの方が安全だろう。
極端な事を言えば、登録されれば105円の印鑑だって実印になる。

しかし、これはあまりお奨めできない。
まず第一に安価な印材(ラクト)は欠けやすい。
欠けると印影が変わるのでその都度登録し直さなくてはいけなくなり、手間と登録料の無駄が発生する。
いくら印鑑を安く手に入れてもこれでは本末転倒だ。

第二に、同じ印影の物が第三者に容易に手に入る事。
100円均一で売られている印鑑は手彫りではなく、型で作ったり機械で彫ったりするので、どうしても同じ印影になってしまう。
これでは唯一無二の証にはならない。
実印は金銭などの貸借契約書や不動産の取引など、重要書類のやりとりで使用される最も重要な印鑑。
家族が安易に認印として使う事は絶対に避け、捺印する場合も契約書の内容を熟読した上で極めて慎重に扱うべきなのだ。

母が「印鑑が無くなった!!」と騒いでいる時、実印の知識がほとんど無かった私は暢気に構えていたが…実際かなりの非常事態だった。
「泥棒が入ったのではないか?」と空き巣まで疑った母だったが、結局は、普段収納していない場所(カバンの中)に入れていたというオチ。
実印が見つかった時の、母の安堵に満ちた顔を私は今でも忘れられない。

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